AKANET3号

あれから二年…

東京都の震災対策を検証する

 

 悪夢のような阪神・淡路大震災から、ちょうど2年が経過

しました。世界最大級の都市直下型地震は、一瞬のうちに約

20万棟の家屋を倒壊・焼失し、6,300万人もの尊い命

を奪うとともに負傷者35,000人という戦後最悪の災害

をもたらしました。安全性を誇っていた高速道路や地下構造

物も各所で崩壊し、都市機能に壊滅的なダメージを与えまし

た。失われた住居・家財と都市基盤の被害額は10兆円にも

のぼると云われています。

 一部の繁華街を除いて「復旧」から「復興」への足取りは

重く、本格的復興を目指した区画整理事業も、「減歩率」(

道路や公園に地権者が提供する比率)をめぐり行政と市民が

対立していると報ぜられています。一日も早く本格的復興事

業が完成し、明るく・希望に溢れた神戸市に甦ってもらいた

いと心から願っております。

 1,200万人の人口を擁し、政治・経済・文化の中枢機

能が高度に集中している東京に大地震が発生した場合、その

被害は阪神・淡路大震災を超える極めて大きなものになるこ

とは明らかです。今回は、阪神・淡路大震災のあと東京では

どのような防災対策が講じられているのかを、平成8年6月

に策定された「東京都(第6次)震災予防計画」から検証す

ることにします。


 「地震に強い都市づくり」に向けて

1、地震に強い都市構造への転換

    木造住宅密集地区域など危険度の高い地域を重点的

    耐震・耐火の都市構造への転換を進めるとし、平成

    9年度から事業を本格的に展開する。

2、木造密集市街地等の整備と再開発

    従来からの「市街地再開発事業」「土地区画整理事

    業」に加え「その他の防災まちづくり事業」制度を

    強化し、災害に強い安全で快適なまちづくりの事業

    推進を図ってゆく。

3、都市空間の確保

    公園は、平時はレクリエーション・環境保全・都市

    景観の骨格として機能を有するが、災害時には延焼

    の防止(焼止り)の機能を持つ。さらに避難場所と

    して、また救護・復旧の拠点としても重要な役割を

    持つものなので、今後防災効果の高い「安心公園」

    の整備を進める。

4、道路・橋梁の整備

    道路や橋梁は、単に人や物の輸送を分担する交通機

    能のみならず、災害時においては火災の延焼防止効

    果や避難通路・緊急物資等輸送ルートとなるなど多

    様な機能を有している。

    防災効果の高い都市計画道路を重点に、新設・拡幅

    等の整備を促進し、橋梁についても架け替えや補強

    等を行っていく。

5、河川・海岸・港湾の整備

    過去の地震や台風の教訓から、多摩川から旧江戸川

    にいたる臨海部と、これらに連なる河川のうち特に

    危険な地域の事業は、耐震構造の防潮堤・護岸・水

    門として既に完成している。救護物資・被害者の海

    上輸送基地・復旧時における復旧資材などの陸揚物

    流拠点として、重要な役割を担う東京港の耐震強化

    等の整備を引き続き行う。

6、ライフライン施設の安全化

    上下水道・電気・ガス・通信等のライフライン施設

    は、どれ一つが欠けても通常の生活・救護や復旧活

    動にも大きな障害ともなる。

    各ライフライン施設が、震災時においてもその機能

    を十分に発揮し、社会全体に及ぼす影響を最小限に

    止めるよう、耐震化等の安全化対策を進めるととも

    に、多重化などのバックアップ機能の充実につとめ

    る。

7、建築物等の安全化

    従来から実施されていた公共建築物の耐震不燃化の

    促進と、創設された民間建築に対する耐震不燃化助

    成制度によって施策を一層強化する。

    学校・病院・劇場等の特殊建築物やマンション・個

    人住宅の耐震改修促進のため、セーフティーローン

    を創設し融資斡旋と利子補給を行う。

8、復興計画の検討

    有事の際には、極めて短い時間で復興計画を策定し

    直ちに復興事業に取りかかれるよう、あらかじめ復

    興の手順や復興計画に対する都民の合意形成の方法

    円滑な復興に不可欠な建築制限を始めとする私権制

    限のあり方など、復興に係わる様々な課題について

    検討を行い、平成9年度には復興計画のマニュアル

    として都民に対して広報等を行う。


 この他、「地震被害の軽減・防止」「防災体制の整備」

「救援・救護体制の整備」「都民の防災行動力の向上」など

を取り上げ、平成12年度までに完成させるとしています。

これらに要する事業費総額は、平成7年度から9年度までの

3年度分で約3兆円と試算されています。

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