AKANET5号

池袋−魅力ある街づくりの実現へ

池袋ルネッサンス構想 15年目の検証 >>1

 今から15年前(昭58年)、「21世紀への池袋副都

心づくりを考える」という提案が(社)東京都建築士事務

所協会 豊島支部 都市計画委員会(委員長・宇田川達生 

副委員長・猪狩達夫)によって行われた。ちょうどこの年

豊島区は区政50周年を迎え、都市計画委員会ではこれか

らの副都心づくりを多くの区民と一緒に考えてゆくには良

い機会だと考えたからである。

 会場となった豊島区庁舎ロビーには、当時の池袋副都心

圏の現況模型(縮尺1/1000)と、同一サイズで作成した街

づくり提案模型・説明パネルの他に地元小中学校の協力を

得て「わたしたちのまち21世紀のすがた」と題する絵と

作文が展示された。会場の模様がマスコミで報道されたこ

ともあり、展示会終了後地元商店会・大手百貨店・各種団

体等からの要請によって説明会が多数開かれるに至った。

その結果、予期した以上の大きな街づくり運動へと発展を

遂げたのである。

 プロジェクトにおいて特に重視した点は、行政が提示す

る都市計画案を地元が容認する在来型の街づくりシステム

から脱却して、我々生活者自身の手によって創ったアイデ

ィアを行政に提示しようという事であった。その結果、提

案者と地元組織がリーダーとなり、発想から立案、計画の

進め方・発表レポートに至るまでの全てを、生活者自身の

手で創りあげるというユニークなスタイルが構築されるこ

ととなった。

 では、その過程とはどのようなものだったのだろうか。

 当時街づくりというものは、行政の仕事だと誰もが思っ

ていた。そのため、希望や要望があれば、陳情書にまとめ

た上で提出するのが、せいぜいのところであった。事実、

説明会においてもこの提案をそのまま陳情の資料として利

用させてもらいたいとの申し出を各所で受けた。

 

 しかし、「自分たちの街の将来イメージを本格的に育て

ていくためには、いきなり行政に依存するような他力本願

の考え方をまず捨てるべきだ。自らの知恵と時間と資金を

出し合うことからスタートする姿勢が大切である」と説明

会の中で繰り返し提唱した。

 これが理解されることとなり、池袋副都心協議会が推進

母体となって、募金活動が行われ、約2千万円の資金が調

達された。この募金をもとに、権威ある(社)日本都市計

画学会に調査委託し、学会と地元団体が一体となって練り

上げた「池袋ルネッサンス構想」へと変貌を遂げたのであ

る。さらに平成元年、建設省によって創設された「複合基

盤施設整備事業」の補助金によって、このプロジェクトの

目玉事業の推進計画が策定され今日に至っている。

 この「池袋ルネッサンス構想」は、現実にある問題点を

直視しながら、21世紀への将来イメージを全く新しい独

自の視点から描いたもので、「文化・モール・デザイン」

の三つを基本コンセプトとし、過去・現在・未来のテーマ

設定からアプローチしたものである。21世紀の池袋副都

心は、子供から老人まで全ての人々が楽しめる機能を持つ

「人間復権の街−リラックス未来都市」と位置づけ、具体

的な街づくり提案を「未来の21の扉」としてまとめられ

ている。

 あれから15年、その間に我々の提案のうち何が実現し

何が実現されずにいるのかを次号から順次検証していくこ

とにしたい。

提案模型(1984)

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