AKANET5号

 

地元のまちづくりと茜設計

 去る10月24日、「明日館の見学と記念講演会」が東

京都建築士事務所協会と豊島区の共催で行われました。

 これは重要文化財に指定され、動態保存のモデルケース

となる自由学園明日館の保存・修理への理解と支援の輪を

広げようと、宇田川代表が実行委員長となり、豊島、板橋

練馬、中野、杉並の5支部によって企画されたものです。

 当日は協会会員、行政関係者だけでなく、初めての試み

として一般の方々も参加できるようにしたところ、平日の

午後にもかかわらず280名もの参加者がありました。記

念講演会にはライト研究の第一人者である谷川正巳日大工

学部教授を講師としてお迎えし、最新の研究成果を交えな

がらの興味深い話に参加者一同、熱心に耳を傾け、引き続

き施設の見学を行いました。

 F・L・ライトの海外作品は、世界中で日本にある三作

品を残すのみとなっています。明日館はそのうちの一つと

いう貴重な建物なのです。

 建物の動態保存にかかる費用については、国から50%

都から25%の補助があるものの、ひどく老朽化している

明日館の修理は解体再建築となるため、所有者である自由

学園の費用負担はかなりの額となります。そこで、少しで

も再建費用の足しになればとの思いで、当日募金活動をい

たしましたところ、建築士事務所協会からの寄付金と合わ

せて161,117円を自由学園に寄付することができました。

 さらに今年に入り、豊島区街づくり公社からこの保存活

動に大きなご理解とご賛同をいただきました。今秋より1

年間にわたり、公社と自由学園が主体となって明日館改修

支援のための啓蒙活動および募金活動が広く行われること

になったのです。地道な活動が実を結び、大きく一歩を踏

み出した感があります。建築士事務所協会も事業実行委員

会の一員としてお手伝いすることになりますが、明日館を

支える人々の輪はますます大きく広がっていくことでしょ

う。

 修復には4年程かかる見通しですが、強く美しく再建さ

れた明日館の姿を早く見たいものです。

 私共は「地域社会への貢献」をモットーに、今後もさま

ざまな地域活動を継続する所存です。

 

 

宇田川様

 ごぶさたしておりますが、お元気にお過ごしのことと存

じます。

 私は持病(リューマチ)が進行して、療養中の山の中か

ら出かけられなくなり、すっかり失礼いたしております。

 すでにご承知のように、明日館は、おかげさまで重要文

化財となり未来に残ることになりました。長い間ご心配頂

きましたことを有難く感謝しております。

 さてこの度、思いがけず同封のフォトのようなライトス

ピリット賞が、アメリカのライト建築保存協会から贈られ

ました。明日館の保存を希ったボランティアグループ「明

日館の保存を考える会」「明日館を保存したいものの集い

」「明日館の史料を集める会」など建築家、学者、学園卒

業生の他、支援して下さった皆さんに贈られたものです。

 去る11月19日、同協会理事のシェリリン・ワイデル

さんが持参され私が代表として受取らせて頂きました。な

お、自由学園にも、特別賞が贈られました。

日本だけでなく、アメリカでも大勢の人々が、共に明日館

の保存を喜んでおられることを知り、まことに嬉しいこと

です。

 ライシャワー氏が明日館を「文化のかけ橋」と書かれま

したようにこの度の受賞により、日米文化の喜びのかけ橋

となったことを実感しております。

 これまでの明日館に寄せられましたご厚情を謝すと共に

明日館が今後も平和のかけ橋として生き続けられますよう

近々はじまります修復を暖かく見守っていただけましたら

幸いです。

羽仁 結子

 

※羽仁結子さんは、自由学園創設者羽仁もと子・吉一夫妻

のお孫さんで、「明日館を保存したいものの集い」の事務

局長として、熱心に保存活動を進められている方です。

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