AKANET5号

建築あ・ら・かると 

「一寸・尺(ちょっと・しゃく)な話」

 建築の設計図では寸法の単位はoで表し、畳の大きさは

900×1800、6帖間は2700×3600のように書きます。何や

ら全て300の倍数ですね。当たり前です。日本の家は「尺」

をモデュール(基本寸法)にしているからです。この

「尺」は古代中国で親指と中指の先までの長さを1尺とし

たことから始まったとされ、当時で約17.8pではなかった

でしょうか。やがて唐代になり唐尺(からしゃく)という

単位が制定され、飛鳥時代に日本に伝えられ、単位の制度

が日本でも確立されたと言われています。この間1尺の長

さは時代とともに長くなっていきました。

 一寸余談ですが、「尺取虫」の語源は何でしょう?今ふ

と 思いついたのですが、きっとこの虫の動きが指で尺(長

さ)を測るときの動きとよく似ているところからきたので

しょうか。ほかに寸取虫と呼ぶこともあり、なんと英語で

は「インチウォーム」と言うのだそうですよ。

 さて、日本においては飛鳥時代以前に「かさ」という単

位があり、杖(つえ)(約3m)の1/10とされていまし

た。これが1尺約30.3pのはじまりです。メートル法の制

定により現在の日本では尺をはじめ尺貫法の単位を取引な

ど公式には使うことができませんが、建築にからんだ私た

ちの日常ではまだまだ生きています。「土地の広さが20

部屋は6帖間、押入の幅は1間半」のように。また、例え

ばニュースなどで「1棟66u全焼」と聞くより「1棟20

〜」の方がずっと解りやすいですね。

 近年『グローバルスタンダード』とか何とか、全ての基

準を世界的に単一化させようとする動きがありますが、文

化まで合わせる必要があるでしょうか。「尺」や「坪」と

いった単位は私たちの生活に根強く定着している伝統的な

単位なのです。

 

ちなみに世界の基準国と称されるアメリカでは、今だに建

築設計図の単位はフィートで、これも尺と同じく人の体の

寸法からできた単位です。1フィート=30.48p(12インチ

)1尺=30.3p(10寸)ですから、フィートと尺の寸法は

そっくりですね。でも決定的に異なるのは、フィートは12

進、尺は10進。どちらが合理的と言えるでしょうか。答え

は「尺」じゃないですか!

<担当:志知>


編集後記

「池袋イベント情報」は、紙面の都合で縮小させていただ

きました。そして新しく「建築ア・ラ・カルト」がお目見

えしました。

 銀行や病院へ行くと天井や奥の通路などをきょろきょろ

見回し、果てはドアやサッシュ廻りをじーっと観察してい

る人、よく見かけませんか?かなり怪しげな人物と思われ

ても仕方がないのでしょうが、建築設計を生業としている

人はよくこういう行動にでてしまうものです。例えば窓の

種類やレンガの積み方などを設計者がどういうふうに見て

いるのか?毎回建築に関連したテーマで「ちょっとした雑

学」みたいなものをご紹介できればと思っています。皆様

にとって役に立つものもあれば、全く役に立たないものも

あるとは思いますが、今後ともご愛顧のほどをよろしくお

願いします。

(澤田)

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