AKANET創刊号

   

教訓を生かした建物づくり

 弊社では、かねてより免震構造の基礎的研究を行ってまいり

ましたが、オーナーの理解がなかなか得られず実現には至りま

せんでした。現在西池袋で鹿島建設によって工事が進んでいる

深野ビル(平成9年3月竣工(建物名「MFビル」)は、耐震構

造で設計し震災前既に建築確認を取得しておりました。しかし

あの惨状を目の当たりにし、初めてご理解が得られ、急遽設計

変更されたものです。

 さまざまな技術的検討の結果、二階の床下に免震措置を取り

付ける「中間免震工法」としました。共同住宅での中間免震は

我が国初の試みであり業界の話題となっております。

 又この建物は2階から13階に賃貸住宅83戸、14階には

オーナー住宅2戸が設けられていますが、経営的観点からもノ

ーリスク・ノーマルリターンの事業手法が採用されています。

 完成した賃貸住宅はすべて「都民住宅」として東京都住宅供

給公社が20年一括して借り上げ、管理運営する契約になって

いるのでオーナーは煩わしさから開放されます。又採算的には

建物費の約10パーセント強の補助金と、利子補給された超低

金利の公的資金とを利用する事ができるので安定した事業とな

ります。さらに、数々の税法上の減免措置が適応され、節税効

果も十分期待できます。

 このように深野ビル(建物名「MFビル」)は、技術的にも経

営的にも「安全」を重視した建物企画で、茜設計の多年にわた

るノウハウが遺憾なく発揮されたものです。

        

 完成したMFビル(仮称 深野ビル)

  オーナーからのコメント

免震集合住宅への設計変更の決断

 AKANETの創刊にあたり、心よりお祝い申し上げ

ます。

 私共のビルの建設に関しましては、日ごろより多大な

るご協力をいただき感謝しております。

 さて、、阪神・淡路大震災の起こった日は、奇しくも

私の誕生日でありました。大震災の惨状をテレビで見る

につけ、今度の私共のビルは東京に大地震のあった場合

一体どうなるのだろうかと内心気にしていた時に、茜設

計より免震集合住宅への設計変更のすすめがありました。

 まず、お話を聞き、コストアップの事が気になりまし

たが若干のコストアップですむならば、この建物は共同

住宅用につくるので、住民が安全を感じ、安心してすめ

る環境を提供すべきだと判断しました。

 すでに建築確認はとっておりましたが、意思決定後の

免震構造への茜設計の変更対応は、スピーディーで、世

間で言われていたよりもとても早く、新たに免震建物の

建築確認が取れました。

 ビルの建築がすすむにつれ、私の友人、知人をはじめ

街の方々からも免震構造の私共のビルへの注目の声が多

く寄せられております。

 一年後の完成(平成9年3月竣工)を心待ちにしており

ます。

深野 守弘

  

  

各紙に記事がとりあげられた

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